“「いまアメリカの医師は想像を絶する過酷な労働条件とプレッシャー、終わりのないストレスにさらされて生きています。80年代から医師と患者の間に<マネージドケア>という制度が導入され、労働者の9割が民間保険に加入して、医療は保険会社が支配するようになった。患者の治療も薬の処方も、まず保険会社に聞かなければいけなくなり、そのための書類作成に膨大な時間を食うようになったのです。 医療をビジネスが支配するというこのシステムは、医師を睡眠不足で過剰労働にさせ、何よりもプロとしてのプライドを粉々につぶしてしまう」 「どんな時にプライドをつぶされたと感じますか?」 「例えば、医療のイの字も知らないような若い女性に、患者に必要な薬を処方する許可をとらなきゃならない時。その薬が本当にいま必要か否かを、電話の向こうの素人とやりあうむなしさといったらありません。まあ彼女たちは承認の電話4件ごとに1件却下するといったようなノルマを会社から与えられていますから、絶対に折り合いはつかない。薬は必要ないだろうと繰り返す彼女に向かって、無駄だとわかっていてもつい言ってしまう。 『ねえ、50キロ先にある保険会社のコールセンターにいる君と、今目の前で患者を診察しているわたしと、いったいどっちがその答えを知っているだろうね?」 でも彼女は却下します。それが会社の指示ならね。で、どうなるか? 患者は私を責めるわけです。なぜちゃんと保険会社に説明してくれないんだって。目の前で泣き出す患者もいます。却下したのは保険会社なのに、まるで私が患者を苦しめているような図になるのはとても辛いですよ」”
— 【読書感想】沈みゆく大国アメリカ - 琥珀色の戯言 (via fukuinorisuke)